植物による大気浄化の研究

植物は葉の気孔という孔を通して大気中のガスを吸収します.これまで窒素酸化物やオゾンなどの汚染ガスを植物が吸収し,大気浄化に貢献することが知られていますが,ベンゼンやアルデヒドなど主に炭素と水素からなる炭化水素に対する植物の吸収能力はほとんどわかっていません.大気中には,数百の炭化水素ガスが存在し,その一部は発ガン性があるなど人体に有害です.本研究室では,最新の質量分析計(陽子移動反応質量分析計)を用いて,植物の炭化水素吸収を測定し,大気浄化能力を評価します.

 これまでに用いた物質は、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン)、低級アルコール類、低級ケトン類、低級アルデヒド類、エステル類です。これら物質が植物によく吸収されるには、以下の2つのステップが必要です。

1 葉の90%以上は水ですが、これら物質が水に溶けやすいこと。

2 溶けた物質が、葉の中の何らかの代謝系に利用されること。

 ベンゼンやトルエンは水に極めて溶けにくいため、ほとんど吸収されません。これは1のステップで止まっています。ケトン類の一種であるアセトンは、水には溶けやすいため、最初の20分程度は吸収されますが、その後吸収されません。これは、2のステップで止まっていることを意味します。アルコール類、アセトン以外のケトン類、アルデヒド類は、植物に吸収されます。葉に含まれる水に溶けうる量より2から4桁多く吸収されているため、明らかに植物が代謝し大気を浄化しています。

 陽子移動反応質量分析計の分析精度は、通常用いられるガスクロマトグラフ質量分析計よりはるかに良く、わずかな吸収まで検知できます。現在、日本に5,6台あります。詳しくは陽子移動反応質量分析計のページ